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不動産の相続評価で“税額が変わる”理由とは?

相続では、不動産の評価額が税額を大きく左右します。土地や建物は相続財産の中でも金額が大きく、評価方法によっては税額が大きく変わることもあります。さらに、不動産は現金と違って分けにくく、管理放置によって思わぬ負担につながるケースもあります。本稿では、不動産評価が相続で重要視される理由と注意点を整理します。
なぜ不動産の評価が相続全体の“要”になるのか
多くのご家庭では、相続財産の中で不動産が大きな割合を占めます。土地・建物は評価額がそのまま相続税に反映されるため、評価のわずかな違いでも税額が変わる可能性があります。
相続発生時に行う財産調査では、不動産の状況を正確に把握することが必須とされます。登記事項証明書の取得、面積の確認、利用状況の把握など、評価の前提となる情報を揃えないかぎり、相続税の計算が進みません。
また、不動産は現金のように分割できないため、遺産分割協議でも調整が必要になります。相続人全員の合意が必要であることから、分割の方向性が決まらないと納税資金の準備が遅れ、10か月の申告期限に間に合わないリスクも生じます。
不動産の価値と扱い方は、申告と分割の双方に影響するため、相続全体の“要”になるのです。
評価を誤るとどうなる?“税額”と“手続き”に影響
不動産評価を正確に把握しないまま相続を進めると、税負担や手続きの両面で問題が発生する可能性があります。
まず、評価額が高すぎる場合、本来より高い相続税を納めることになります。逆に、評価額が低いまま申告してしまうと、後日指摘を受けて追徴税が発生することもあり得ます。
相続手続きでは、期限を過ぎると特例が使えなくなったり延滞税が発生することがあります。不動産評価の遅れは、こうした期限管理にも影響します。
さらに、管理が不十分な不動産や空き家を放置している場合、名義変更や売却がスムーズにできず、資産としての価値が下がる可能性があります。申告・納税と別に名義変更が必要ですが、未処理のまま放置すると、後々の活用に大きな支障が生じます。
評価の誤りや遅れは、税額だけでなく相続全体の段取りに影響するため、最も避けたい事態といえます。
相続前からできる“不動産整理” ― 将来の負担を軽くするために
相続の準備として、財産を見える化し、整理しておくことの重要です。不動産についても、生前から把握しておくことで、相続時の評価や分割の負担を大幅に減らすことができます。
特に、
・名義が古いままになっている
・使っていない不動産がある
・空き家や老朽化した建物がある
といった状況は、相続開始後に調査・評価の時間がかかり、期限内の申告に間に合わない原因になります。
名義変更は期限こそありませんが、放置すると売却できず、結果として納税資金の確保が困難になるケースもあります。また、相続税申告の10か月という期限は短く、家族間の調整に時間がかかりますから、早い段階での相続家族会議がやはりおすすめです。
ご家族の負担を軽減するためにも、相続前から不動産の状態・利用方針・管理状況を整理し、家族間で共有しておきましょう。「誰がどの役割を担うのか」を決めておき、不動産の扱いも明確にしておくことが大切な相続準備です。
不動産の相続評価は、税額だけでなく遺産分割や手続き全体に影響する重要な要素。評価を誤ると税負担が増えるだけでなく、10か月の申告期限に間に合わない、納税資金が用意できないといった問題にもつながります。
相続手続きにおける期限管理と情報共有を徹底し、相続前から不動産などの資産の状況を整理しておくことが、幸せな相続に大きく寄与します。相続の準備は“財産の見える化”から始まります。不動産の状態を正確に把握し、家族で共有することが、負担の少ない承継の第一歩です。
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