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相続手続きはいつから何をする?「3か月」「4か月」「10か月」の壁

相続が始まると、家族はまず「期限との戦い」に直面します。特に“3か月・4か月・10か月”の3つの期限は、相続手続きの優先順位を決めるうえで避けて通れません。これらの時期に行うべき手続きは、期限を過ぎると取り返しのつかない結果を招くことがあります。本稿では、相続手続きの全体像と重要な期限を分かりやすく整理します。
相続開始直後に必要な手続き ― まずは相続手続きの“全体像”を把握する
相続は、被相続人の死亡と同時に開始します。死亡届の提出(7日以内)、火葬許可の取得など、最初の数日間で行うべきことが多く、加えて健康保険証の返却・年金受給停止届などの手続きが続きます。
これらは葬儀の前後で慌ただしくなりがちで、後回しにすると期限を過ぎてしまう可能性があります。
相続人の確定や相続財産の調査も早期に進める必要があります。預貯金・不動産・有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金や保証債務といったマイナスの財産も含めて把握することが重要です。
このように相続手続きは「なにを」「いつまでに」「だれがやるのか」を整理することが欠かせません。そのため、相続発生後は家族の誰かが連絡窓口となり、役割を分担しながら工程表を作ることが、全体の見通しを立てる助けになります。
最初の壁:3か月・4か月以内に求められる“重要な判断”
相続放棄は「3か月以内」
相続開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所で相続放棄の申述が必要です。負債を引き継ぎたくない場合に重要な手続きですが、期限を過ぎると「単純承認」とみなされ、財産と負債をすべて相続する扱いになります。
そのため、この期間に相続人の確定と財産調査を終え、判断材料を揃える必要があります。もし相続財産の調査が遅れると、放棄の判断が期限内にできず、後で負債が見つかっても撤回できないという事態が起こり得ます。
準確定申告は「4か月以内」
被相続人が事業所得や不動産所得のある場合は、死亡した年の所得について「準確定申告」が必要です。相続人全員が連署して提出する必要があり、帳簿類の収集や整理に時間がかかるケースもあります。4か月という期限は短く、他の手続きと並行するため、計画的な進行が欠かせません。
これらの期限を見落とすと控除や特例が使えなくなったり、延滞税が発生するリスクがあります。
最大の壁:10か月以内の“相続税申告と納税”
相続税の申告と納付は、相続開始から10か月以内に行う必要があります。
この期限は相続手続きの中でもっとも負担が大きく、不動産評価、残高証明取得、遺産分割協議書の作成など多くの作業が連動します。
特に不動産が複数ある場合や相続人が多い場合、協議の調整に時間がかかり、期限ギリギリになるケースも少なくありません。計画的な進行が負担を減らすことにつながります。
また、遺産分割の方向性が決まらないまま進めると、申告内容の修正や未分割申告などの手続きが増え、家族の負担がさらに大きくなります。
そのため、
・早期の財産調査
・役割分担
・専門家の早期関与
が、10か月の壁を乗り越えるためのポイントになるでしょう。
このように相続手続きは「期限との戦い」であり、3か月・4か月・10か月という3つの壁を正しく理解して進めることが重要です。期限を意識した逆算スケジュールと、情報共有・役割分担が、家族の負担を大幅に軽減する鍵となります。
相続手続きは待ってくれません。全体像を早めに把握し、「いつまでに」「誰が」行うのかを明確にすることが、相続をスムーズに進める第一歩です。
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