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相続前アクション十か条 ― 幸せな相続のために今日からできること(前編)

相続の準備には、「これをしておけば必ず大丈夫」という単純な正解はありません。しかし、事前にできることをひとつずつ進めておくことで、将来の不安は確実に小さくなります。私たちの著書『相続家族会議のすすめ』では、専門家たちが現場でくり返し目にしてきた学びをもとに、相続前に始めておきたい十か条を整理しました。本コラムでは、その前半の5つを取り上げ、ご家族の備えがどのように形づくられるのかを解説します。どれも派手ではありませんが、「気づいたときに一歩踏み出す」ことで大きな効果を発揮する行動です。
相続前アクション十か条 その1「財産と負債を正確に把握する」
1つ目は、「財産と負債を正確に把握する」ことです。
相続の準備は、家族の現状を知るところから始まります。現預金や不動産、株式などの証券、保険等の資産だけでなく、借入金や未払金などの負債も整理しておくことで、初めて全体像が見えてきます。相続後の混乱は、多くの場合「なにがどれだけあるのか」が曖昧なまま話が進むことで生まれます。早い段階で棚卸しを行うことは、ご家族全員の安心と、今後の話し合いの土台になります。
相続前アクション十か条 その2「家族の価値観と将来像を共有する」
2つ目は、「家族の価値観と将来像を共有する」ことです。
相続の場では、金額や手続きだけでなく、家族それぞれが持つ思いが大きく影響します。どんな暮らしを望んでいるのか、実家をどう扱いたいのか、どこに重きを置くのか。こうした価値観は、対話を通じてしかわかりません。書籍でも、家族の話し合いが不足していたために誤解が生まれた例を紹介しましたが、日頃から小さな対話を積み重ねておくことが、のちの大きな争いを防ぐ最善策となります。
相続前アクション十か条 その3「遺言書や家族信託などの制度を知る」
3つ目は、「遺言書や家族信託などの制度を知る」こと。
選択肢を理解しておけば、状況が変わったときにも柔軟に対応できます。特に意思判断が難しくなる場面を見据えると、利用できる制度を知っておくことは重要です。遺言書には形式の違いや書き方のポイントがあり、家族信託には契約の範囲や役割があります。制度そのものを「難しそう」と距離を置くのではなく、家族に適した選択肢を理解しておく段階から始めることが大切です。
相続前アクション十か条 その4「不動産の活用・整理方針を決める」
4つ目は、「不動産の活用・整理方針を決める」ことです。

相続の現場で最もトラブルになりやすいのが不動産です。活用するのか、維持するのか、売却するのか。将来の方向性を家族で共有しないまま相続を迎えると、判断が混乱しやすくなります。特に、古くからの実家や家族の思いが詰まった家は、感情と経済合理性がぶつかりやすく、話し合いが長期化することもあります。早い段階で現状を整理し、共通認識をつくっておくことが重要です。
相続前アクション十か条 その5「税金対策を早期に着手すること」
5つ目は、「税金対策を早期に着手すること」。
相続税は、準備のタイミングによって選択肢が大きく変わる分野です。土地の評価や資産の整理の仕方によって、適用できる制度やメリットが異なります。相続税を減らすことが目的ではなく、適切な方法を見極めるためにも、早めの着手が結果として家族の安心につながります。税理士や司法書士など、専門家に相談することで、状況に合った現実的な対策が見えてきます。
ここまで取り上げた5つは、相続に向けた準備の「基礎」といえる部分です。どれも今日から始められる行動ばかりであり、特別な手続きや難しい判断は必要ありません。重要なのは、「いつかやろう」と先延ばしにせず、小さな一歩から着実に進めることです。後編では、残りの5つのアクションを紹介し、これらがどのように家族の安心につながるのかをまとめます。
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