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良い借金と悪い借金の違い ― 相続対策における借入の考え方

相続対策というと、「借金はできるだけ減らすもの」と考えがちです。しかし、すべての借入が相続にとって悪影響になるわけではありません。借入の目的や状況によっては、相続を円滑に進めるための手段となることもあります。大切なのは、借金そのものではなく、「なぜ借りているのか」「誰にどのような影響があるのか」を整理することです。本稿では、相続対策における借入の考え方を整理します。

相続において借金が問題になりやすい理由

相続では、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も引き継がれます。そのため、相続が発生したときに借金の内容や状況が整理されていないと、相続人にとって大きな不安材料になります。

特に問題になりやすいのは、

・何のために借りたのか分からない
・返済状況が把握されていない
・誰が管理しているのか不明確

といった借入です。

こうした状態の借金は、相続人にとって「引き継ぎたくない負債」として受け止められやすく、相続放棄や家族間の対立につながることもあります。借金があること自体よりも、情報が整理されていないことが問題を大きくします。

相続対策としての「良い借金」と「悪い借金」

相続対策の観点では、借金を一律に評価するのではなく、その性質を見極める必要があります。

まず「悪い借金」とされやすいのは、

・目的があいまい
・管理がされていない
・返済計画が共有されていない

借入です。これらは相続時に説明ができず、相続人の不安や不信感を生みやすくなります。

一方で、「良い借金」といえるのは、

・目的が明確
・財産の管理や整理と結びついている
・家族に説明できる状態にある

借入です。たとえば、不動産の整理や名義変更、将来の分割を見据えた準備の一環として行われている借入であれば、相続人にとっても理解しやすくなります。

重要なのは、借入の背景や考え方が整理され、共有されていることです。

借入を「残さない相続」に変えるための準備

相続対策として借入を考える場合、将来の相続人が状況を把握できるようにしておくことが欠かせません。

具体的には、

・借入の目的
・返済の進捗状況
・担当者や管理方法

を明確にし、家族が確認できる形にしておくことが重要です。また、借入と不動産や他の財産との関係を整理しておくことで、相続発生後の判断がしやすくなります。

借金だけが切り離されて見える状態ではなく、財産全体の中でどのような位置づけなのかを示すことが、相続人の安心につながります。

借入について家族と話すことは気が重いテーマですが、話題にしないまま相続を迎えるほうが、結果として大きな混乱を招きます。早い段階で情報を整理し、共有しておくことが、相続対策としての借入を「良い借金」に変える鍵になります。

相続対策において、借金は単純に「あるか・ないか」で判断するものではありません。目的が不明確で管理されていない借金は、相続人にとって大きな負担になります。一方で、整理され、説明できる借入は、相続を円滑に進めるための一つの手段になり得ます。

大切なのは、借入を含めた財産全体を見える化し、家族が理解できる状態にしておくことです。借金を残さない相続とは、金額をゼロにすることではなく、次の世代が判断に迷わない形で引き継ぐことだといえるでしょう。

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