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家族の絆を守る相続の進め方 ― 相続専門家チームが伝えたいメッセージ(前編)

相続の場面では、お金や不動産の手続きだけでなく、家族それぞれの想いや価値観が複雑に交わります。書籍『相続家族会議のすすめ』の著者陣は、数多くの現場を経験する中で「相続は家族の関係性を映す鏡である」と繰り返し感じてきました。だからこそ、円満な相続のために必要なのは、制度を知ることだけではありません。本稿では、著者陣が相続支援の現場から学んだ “家族の絆を守るための原則” をご紹介します。

ご家族にとっての「正解」は一つではない

相続では、何を優先するかによって結論が大きく変わります。税負担を抑えることを重視するのか、生活の安定を守るのか、家族の思い出を大切にするのか。家族ごとに正解は異なります。

相続専門家チームとして強くお伝えしたいのは、「制度ありきで判断しない」ということです。相続税や特例、不動産の評価など、正確な知識は確かに重要です。しかし、家族の価値観や暮らしの背景を丁寧に理解しないまま制度だけを当てはめると、後悔を生む相続になりかねません。

家族構成や資産状況が複雑化する今、相続は“家族ごとに異なる答えをつくるプロセス”だといえます。大切なのは、家族が納得できる方向性を一緒に見つけていく姿勢です。

早い段階での対話が「争続」を防ぐ

私たちが最も強調しているのは、親が元気なうちの「家族会議」の重要性です。

相続のトラブルは、財産の多寡よりも「話し合いの不足」が原因になることが多く、突然の病気や認知症により意思確認ができなくなった途端、選択肢が限られてしまいます。

書籍では、「元気なときにこそ準備を始めること」は家族への思いやりであると述べています。


・何を残したいのか
・どんな暮らしを続けてほしいのか
・財産をどう扱ってほしいのか

こうした親の想いを事前に聞ける機会は、実は多くありません。

早期の対話は、家族の気持ちを整えるだけでなく、具体的な対策(遺言書、家族信託、資産整理など)を適切なタイミングで実行するための土台にもなります。

専門家は“答えを押し付けない伴走者”

著者陣の姿勢として一貫しているのは、「専門家が結論を押し付けない」という姿勢です。

相続は法律・税金・不動産など複数領域が絡み、家族だけでは判断できない場面も多いもの。しかし、専門家がどれだけ制度を理解していても、家族の心情や背景までは外から見えてきません。

本書に登場する支援の多くは、専門家が家族の話を丁寧に聞き、価値観を尊重しながら “その家族にとっての最適解” を探し出すプロセスが中心になっています。

たとえば、旧家の相続では、思い出をどう残すかに悩む家族もいれば、負担を軽減して未来の生活を守りたい家族もいます。どちらが間違っているわけではなく、双方の気持ちを踏まえた着地点こそが重要です。

相続の専門家は、法律や制度の知識で方向性を示すと同時に、家族の対話を支える存在であるべきだというのが私たちの共通した考えです。

後編では、「地域に根ざした専門家の役割」と「持続可能な相続をつくる視点」についてお伝えします。

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